3・4・5年生(ビリカ・キャンパス)の算数担当のパトリック先生が、
私的な用事でお休みするとのことだったので、
今回は私が自らその代理を務めることにして、
ビリカ・キャンパスに乗り込んでいきました。
キラキラの事務長である私は、
学園長のジャシンタ先生とともに、
教職員の皆さんを指導する立場にありますが、
たいていは全体的なことの指導であり、
具体的なことまでなかなか踏み込みません。
しかし、算数は別です。
ケニアでは理数科教育が弱く、
教員たちも算数が苦手だった人たちだらけであり、
そういう教員たちがこどもたちに算数を教えているので、
なかなか算数嫌い、算数苦手の悪循環から抜け出せないのです。
キラキラ学園が小学校高学年を擁するようになり、
キラキラもケニアの算数苦手症候群の例外ではないことが判明した今、
私自らがキラキラの算数教育を救うために、
一石投じたいとここ数年考え続けていたのです。
今回の代理授業で、
1・2年生の算数担当のレジナ先生や、
3・4・5年生の算数担当のパトリック先生が、
普段どのように指導しているかをこどもたちを通して知り、
私自身が「研究授業」的な授業をしてみることで、
今後の教員指導に役立てるとともに、
代理であるがゆえのこどもたちへのインパクトをたくみに利用して、
算数の実用性や楽しさをこどもたちに少しでも印象付けたい、
というのがねらいです。
1時間目が3年生、2時間目が4年生、3時間目が5年生の算数授業でした。
いずれの学年でも、最初に、
一桁同士の掛け算問題24問を3分以内でどれだけできるかトライアルしました。
すると、5年生で全問正解がわずかに2人いただけで、
5年生の平均は10問程度、
4年生は8問程度、
3年生は5問程度、でした。
普段どれだけ量をこなしていないか、
普段どれだけ集中してハイスピードで計算する訓練をしていないか、
明らかになりました。
しかし、計算の慣れやスピードはあくまで二の次であり、
算数の本質は「思考する」「解決する」「説明する」という部分にあります。
3年生では、
こどもたちを2列、3列、4列に並ばせてみて、
掛け算九々の実際的な意味を考えてもらいました。
4年生は、
起立して両腕を左右にめいっぱい広げて、
右手中指から左手中指までの長さ(以下、「幅」)を、
30㎝の定規を利用して測ってもらいました。
5年生は、
この「幅」に加え、
身長(以下、「長さ」)をも測ってもらいました。
そして、各自の身体計測値をノートに記し、
「幅」と「長さ」のどちらが長かったかを調べてもらいました。
すると、「長さ」の方が長かった人は30%程度、
「幅」の方が長かった人が70%程度という結果になりました。
さすがに5年生相手だと、
いろいろと試すことができました。
掛け算24問を解かせるときに、
「今日は消しゴムは使わないで。
実生活では消しゴムなんて使わないで計算しなきゃならないんだから。
間違ったと思ったら、二重線で消して、書き直せば良いんだよ」
その掛け算を始める前に、
「掛け算九々を忘れちゃった人がいても、
掛け算の意味は忘れないでね。
掛け算は、足し算を何回もすればいいだけなんだから」
身体計測した際に、30㎝定規4本分と24㎝だった場合、
①30+30+30+30+24=144㎝
②30×4+24=144㎝
という2通りの計算方法があります。
どちらも児童に挙手させて説明させることができました。
「算数はテストで問題を解くだけではなく、こうやって説明できるようになるための教科なんだよ」
「幅」の方が「長さ」よりも長い人の方が多かったことが判明したとき、
「みんな、どう、驚いた?」
と尋ねたら、ぽか~んとしていたので、
「「長さ」の方が「幅」よりも長いと思っていた人?」
と尋ねたら、たくさん手が上がりました。
逆に、
「「幅」の方が「長さ」よりも長いと思っていた人?」
と尋ねたら、手は上がりませんでした。
「こうやって、予想して、結果を見て、どうしてかなあ、と考えることが算数なんだよ」
「そして、面白いなあ、不思議だなあ、美しいなあ、と感心することが算数なんだよ」
「家に帰ったら、お父さんやお母さんや弟や妹の「長さ」や「幅」を定規で測って比べてご覧?」
この授業を後ろで観賞していたアレックス先生には、
「新しいことを学ばせていただいてありがとうございます」と言われました。
私自身、小学、中学、高校、大学などで、
数えきれないくらいの授業や講義を聴いてきました。
しかし、強烈に覚えているのは、
学科の勉強内容ではなく、
「算数がいちばん重要な教科だよ」とか、
「算数の価値は応用問題にある」とか、
「歴史はサイエンスである」とか、
「物理レポートの考察の作文はとても重要」とか、
そういった人生の軸になるような言葉だけです。
しかも、そのときは何となく聞き流していた言葉も、
時が経ってじわじわと理解できたということもありました。
そういうインパクトを、
アレックス先生や、
こどもたちのうち何人かに与えることができたなら幸いです。
さて、お昼休み明けの授業で、
3年生を教えているドロシー先生のスワヒリ語や英語での説明を、
隣の職員室にいながら壁越しに聴き入りました。
とても上手に抑揚や間を使い、
水が地面にしみこむように、自然に頭に入っていく説明です。
キラキラ教員陣の中では、
いちばん説明の上手な先生ではないでしょうか。
逆に、他の先生方の説明はいまいちということであり、
教職員に対して、説明力向上のための「数学的」指導をしていくことが、
私の今年のテーマの一つであります。
そんなこんなで、まる1日をビリカ・キャンパスで過ごしました。
1週間後に控えた全キラキラ運動会(陸上競技会)の練習です。
学生時代(クロスカントリースキーのリレー)に経験した、
あの一斉スタートのみなぎる緊張感と闘争心、好きでした。
リレーのアンカーたち。
続々とゴールに雪崩れ込み、倒れ込みます。
ケニアの学校では、
月曜日と金曜日は国旗掲揚、国歌斉唱の日なのです。
給食のおかわりを、
教室ではなくベランダで食べている5年生男子たち。
規律は規律で守らせて、あとは自由にさせています。
お昼休みに走高跳に興じるこどもたち。
最近は、正面跳びやはさみ跳びだけでは飽き足らず、
ベリーロールっぽい跳び方をして着地時に倒れ込む子も増えて来ました。
そのために、午前中に、調理人のネルソン先生が、
着地点に砂を多めに集めていました。
お昼休みに教室内で、
ノートの紙を切ってネックレスづくりをしている3年生女子たち。
のりはどうするの?と尋ねたら、
木の枝から出る汁がのりになる、とのこと。
いいですねえ。身近に手に入る材料で工作!
こういう自由創造、好きです!!
毎週金曜日の最後の授業はキャンパス集会です。
中国製仮設校舎のホールに3・4・5年生たちが集います。
合唱(かけあいの歌)の先導をする女子たち。
歌いながら喜びに浸っている男子です。
「「おんがく」は「音楽」であって「音学」ではない。
ましてや「音が苦」であってはならない」
という詩を、
かつて私が通っていた小学校(ノゾミさんも昨年通った上里小学校)の音楽室で、
毎週のように見ていました。
「数学」も「数楽」になり、
「学校」が「楽校」になり、
人生が良い意味で快楽になりますように。
相原 記
私的な用事でお休みするとのことだったので、
今回は私が自らその代理を務めることにして、
ビリカ・キャンパスに乗り込んでいきました。
キラキラの事務長である私は、
学園長のジャシンタ先生とともに、
教職員の皆さんを指導する立場にありますが、
たいていは全体的なことの指導であり、
具体的なことまでなかなか踏み込みません。
しかし、算数は別です。
ケニアでは理数科教育が弱く、
教員たちも算数が苦手だった人たちだらけであり、
そういう教員たちがこどもたちに算数を教えているので、
なかなか算数嫌い、算数苦手の悪循環から抜け出せないのです。
キラキラ学園が小学校高学年を擁するようになり、
キラキラもケニアの算数苦手症候群の例外ではないことが判明した今、
私自らがキラキラの算数教育を救うために、
一石投じたいとここ数年考え続けていたのです。
今回の代理授業で、
1・2年生の算数担当のレジナ先生や、
3・4・5年生の算数担当のパトリック先生が、
普段どのように指導しているかをこどもたちを通して知り、
私自身が「研究授業」的な授業をしてみることで、
今後の教員指導に役立てるとともに、
代理であるがゆえのこどもたちへのインパクトをたくみに利用して、
算数の実用性や楽しさをこどもたちに少しでも印象付けたい、
というのがねらいです。
1時間目が3年生、2時間目が4年生、3時間目が5年生の算数授業でした。
いずれの学年でも、最初に、
一桁同士の掛け算問題24問を3分以内でどれだけできるかトライアルしました。
すると、5年生で全問正解がわずかに2人いただけで、
5年生の平均は10問程度、
4年生は8問程度、
3年生は5問程度、でした。
普段どれだけ量をこなしていないか、
普段どれだけ集中してハイスピードで計算する訓練をしていないか、
明らかになりました。
しかし、計算の慣れやスピードはあくまで二の次であり、
算数の本質は「思考する」「解決する」「説明する」という部分にあります。
3年生では、
こどもたちを2列、3列、4列に並ばせてみて、
掛け算九々の実際的な意味を考えてもらいました。
4年生は、
起立して両腕を左右にめいっぱい広げて、
右手中指から左手中指までの長さ(以下、「幅」)を、
30㎝の定規を利用して測ってもらいました。
5年生は、
この「幅」に加え、
身長(以下、「長さ」)をも測ってもらいました。
そして、各自の身体計測値をノートに記し、
「幅」と「長さ」のどちらが長かったかを調べてもらいました。
すると、「長さ」の方が長かった人は30%程度、
「幅」の方が長かった人が70%程度という結果になりました。
さすがに5年生相手だと、
いろいろと試すことができました。
掛け算24問を解かせるときに、
「今日は消しゴムは使わないで。
実生活では消しゴムなんて使わないで計算しなきゃならないんだから。
間違ったと思ったら、二重線で消して、書き直せば良いんだよ」
その掛け算を始める前に、
「掛け算九々を忘れちゃった人がいても、
掛け算の意味は忘れないでね。
掛け算は、足し算を何回もすればいいだけなんだから」
身体計測した際に、30㎝定規4本分と24㎝だった場合、
①30+30+30+30+24=144㎝
②30×4+24=144㎝
という2通りの計算方法があります。
どちらも児童に挙手させて説明させることができました。
「算数はテストで問題を解くだけではなく、こうやって説明できるようになるための教科なんだよ」
「幅」の方が「長さ」よりも長い人の方が多かったことが判明したとき、
「みんな、どう、驚いた?」
と尋ねたら、ぽか~んとしていたので、
「「長さ」の方が「幅」よりも長いと思っていた人?」
と尋ねたら、たくさん手が上がりました。
逆に、
「「幅」の方が「長さ」よりも長いと思っていた人?」
と尋ねたら、手は上がりませんでした。
「こうやって、予想して、結果を見て、どうしてかなあ、と考えることが算数なんだよ」
「そして、面白いなあ、不思議だなあ、美しいなあ、と感心することが算数なんだよ」
「家に帰ったら、お父さんやお母さんや弟や妹の「長さ」や「幅」を定規で測って比べてご覧?」
この授業を後ろで観賞していたアレックス先生には、
「新しいことを学ばせていただいてありがとうございます」と言われました。
私自身、小学、中学、高校、大学などで、
数えきれないくらいの授業や講義を聴いてきました。
しかし、強烈に覚えているのは、
学科の勉強内容ではなく、
「算数がいちばん重要な教科だよ」とか、
「算数の価値は応用問題にある」とか、
「歴史はサイエンスである」とか、
「物理レポートの考察の作文はとても重要」とか、
そういった人生の軸になるような言葉だけです。
しかも、そのときは何となく聞き流していた言葉も、
時が経ってじわじわと理解できたということもありました。
そういうインパクトを、
アレックス先生や、
こどもたちのうち何人かに与えることができたなら幸いです。
さて、お昼休み明けの授業で、
3年生を教えているドロシー先生のスワヒリ語や英語での説明を、
隣の職員室にいながら壁越しに聴き入りました。
とても上手に抑揚や間を使い、
水が地面にしみこむように、自然に頭に入っていく説明です。
キラキラ教員陣の中では、
いちばん説明の上手な先生ではないでしょうか。
逆に、他の先生方の説明はいまいちということであり、
教職員に対して、説明力向上のための「数学的」指導をしていくことが、
私の今年のテーマの一つであります。
そんなこんなで、まる1日をビリカ・キャンパスで過ごしました。
1週間後に控えた全キラキラ運動会(陸上競技会)の練習です。
学生時代(クロスカントリースキーのリレー)に経験した、
あの一斉スタートのみなぎる緊張感と闘争心、好きでした。
リレーのアンカーたち。
続々とゴールに雪崩れ込み、倒れ込みます。
ケニアの学校では、
月曜日と金曜日は国旗掲揚、国歌斉唱の日なのです。
給食のおかわりを、
教室ではなくベランダで食べている5年生男子たち。
規律は規律で守らせて、あとは自由にさせています。
お昼休みに走高跳に興じるこどもたち。
最近は、正面跳びやはさみ跳びだけでは飽き足らず、
ベリーロールっぽい跳び方をして着地時に倒れ込む子も増えて来ました。
そのために、午前中に、調理人のネルソン先生が、
着地点に砂を多めに集めていました。
お昼休みに教室内で、
ノートの紙を切ってネックレスづくりをしている3年生女子たち。
のりはどうするの?と尋ねたら、
木の枝から出る汁がのりになる、とのこと。
いいですねえ。身近に手に入る材料で工作!
こういう自由創造、好きです!!
毎週金曜日の最後の授業はキャンパス集会です。
中国製仮設校舎のホールに3・4・5年生たちが集います。
合唱(かけあいの歌)の先導をする女子たち。
歌いながら喜びに浸っている男子です。
「「おんがく」は「音楽」であって「音学」ではない。
ましてや「音が苦」であってはならない」
という詩を、
かつて私が通っていた小学校(ノゾミさんも昨年通った上里小学校)の音楽室で、
毎週のように見ていました。
「数学」も「数楽」になり、
「学校」が「楽校」になり、
人生が良い意味で快楽になりますように。
相原 記
#
by kjkirakira
| 2018-02-09 23:11
| ブログ 現地キラキラ