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アフリカでのこども支援「キラキラ」+それを日本で後援「キラキラを支える会」


by kjkirakira

ハスラーの国で、売買の攻防

キラキラの新中学校の制服類や、
キラキラの幼・小・中のおそろいジャージなどをナイロビなどで仕入れるために、
ここ数か月で複数のディーラーとやり取りしています。

そうした中で、もう少しでだまされるところだった!
というのも経験しています。

まさに、売買は売る人と買う人の心理戦、頭脳戦なのです!


ある時、ジャシンタ先生の幼馴染の親友カレさんに、
ジャージの仕入れを依頼したときのこと。

カレさんがそのお店にいた際に、
「全部でいくらいくらだから今すぐ送金して」
と連絡が入りました。

その際、店員さんに、
「詳細が書かれた領収書の写真を撮ってWhatsAppで送って」
と言ったら、間もなくその領収書の写真が送られてきました。
(日本ではLineが主流ですが、ケニアではWhatsAppが主流です)

それを見ると、
私たちがオーダーした数よりも多くの数、多めの金額が記載されていたのです。
それを指摘すると、店員さんは「ごめんね」と言いながら訂正した別の領収書の写真を送ってきました。
危うく、1万シリング以上(1万円以上)余計に払わされるところでした。

カレさんは、
「物を荷造りする際は私もしっかりと確認するつもりだった」
と言っていましたが、
その前の段階で、
店員はおっちょこちょいの間違いをしたふりをしながら、
私たちをかもにしようとたくらんでいたのです。

きっと、そうやって、
何人もの無知で無垢な人たちをだましているんだろうなあ、
と想像しました。


そして、身内の青年ジョビくんにジャージの仕入れを依頼したところ、
普通にジャージ一着いくらとかで仕入れるのではなく、
ジャージの材料(布)をまとめ買いして洋裁職人に渡し、
洋裁職人には手数料(糸などの細かい材料費を含む)を払う、
という方式をとることにしました。

ところが、できあがってきた物をよく見ると、
ポケットがふさがっていないなど、不良品だらけ!!!
職人いわく、「急いでいたから」
私たちは「急いでくれ」などとは言った覚えがない!
不良品を売りつけるなど、プロフェッショナルの風上にも置けん!!

しかし、このパターンで、
再びジョビくんに仕入れを依頼することにしました。
前回の不良品の損害をしっかりと洋裁職人たちに補填してもらうという条件付きで。
さらに、不良品にならないように完璧に(当たり前のことですが)仕上げるという条件付きで。

しばらくして、出来上がり、
数の詳細がわかり、
前回の不良品による損害を補填するために今回は無料で数着余計に追加してくれたこともわかり、
「いくらいくらを送金してほしい」
と連絡が入りました。

ここで、私は急がず、
パソコンのエクセルに向かい、
前回の料金と比べてみることにしました。

すると、前回洋裁職人たちに払った手数料は、
ジャージ1着につき359シリングくらいだったのですが、
今回は400シリングくらいになっていたのです。
これでは、キラキラの児童生徒たちに売る値段を値上げしなくてはならなくなります。
想定外の値上げです。

そのことをジョビくんを通して洋裁職人たちに伝えたところ、
二転三転を経て、請求額の詳細が送られてきました。
一着359シリングで60着、合計21540シリング
ナマンガ行きバス乗り場までの運送費、500シリング、
ナイロビからナマンガまでの運送費、500シリング、
ここまではOKでした。

しかし、奴らは追加で、
1500シリングほどを請求してきていたのです。
その理由が、
「完璧につくったことに対する手数料」
言語道断です!!!
完璧に作ることが当たり前なのに、
それに手数料を求めてくるなんて!!!

ジョビくんの報告によると、
この1500シリングの話になった際、
職人たちはお互いに顔を見合わせながら、
「誰がそんなことを言いだしたんだ?」
「俺じゃないぞ」
などと内輪もめを始め、
その場に居合わせなかった職人の長に連絡をとったところ、
「何だ、その余計な請求額は? ただちにそれを削除せよ!」
という鶴の一声があった、
とのこと。

ジャージ合計60着に対し、
余計な出費が1500シリング(1700円)もあったとすると、
こちら側の損害はかなり大きくなるのです。
今回は、それを瀬戸際でストップすることに成功し、
ジョビくんも、私に、
「良かった、気付いてくれてありがとう!」と言ってきました。

恐らく彼らは、
無知で無頓着な買い手たちから、
そうやって100円や1000円などのお金をだまし取るのに慣れているのでしょう。
しかし、今回彼らの目論見は成功しませんでした。
ジョビくんや私の彼らに対する信頼にもひびが入ることになりました。


さて、ジャージの洋裁職人たちは、ジョビくんにこう尋ねたそうです。
「どうして君らの学校は、校章などをジャージの胸に縫い付けないんだい?」
校章などを付けると、一着に付き追加料金が50~100シリングかかります。
そのある意味で無意味な50シリング(60円)を節約することで、
キラキラの保護者の皆さんの家計を圧迫しないように気を遣っているのです。

しかし、洋裁職人たち、および、多くの公立・私立の学校のジャージ担当者たちは、
校章を付けることで、よそのお店で購入できないようにして、
利益を洋裁職人と学校のジャージ担当者(多くは校長)で独占したい、
と考えているようなのです。

ま、洋裁職人たちの利益は1着につき50~100シリング程度ですからかわいいものです。
しかし、学校の担当者たちは、
ジャージを750シリングで売るかわりに1100シリングなどで売って、
罪のない保護者たちの家計を圧迫しながら私腹を肥やしているそうなのです。

ジョビくんから、
私たちの学校は保護者の皆さんの家計を思いやり、
利益を独占したりするつもりは全然ない、
という説明を聞いた洋裁職人たちは、
「君らの学校の運営には外国人が絡んでいるね?」
と、まさに図星の指摘があったとのこと。

他人のふところを思いやる、
自身の利益は求めない、
こう考えて商売するケニア人はほぼ皆無なのです。
それで、彼らは、
きっと慈善目的の外国人がジョビくんの後ろについているんだろう、
と考えたのでしょう。


ケニアでは、2022年8月の総選挙で、
野党代表のルト氏が新大統領に選出されました。
ルト氏が選挙戦で強調していたのは、
ケニアの庶民の権利と経済を尊重する政策でした。
それを、Hustler Nationというキャッチフレーズで語り、
Wheelbarrowの絵を旗印にしていました。

Hustler(ハスラー)とは、辞書Weblioによると、
活動家、敏腕家、やり手、
詐欺師、ペテン師、売春婦
といった意味の言葉です。
すなわち、ケニアの庶民たち、商売人たちは、
だましだまされながら、あらゆる手を尽くし、
あくせくしながら、東奔西走しながら、日々の糧をかせいでいる、
というのです。

Wheelbarrowとは、
土木建築作業で使う手押し車、一輪車のことです。
つまり、汗水流して、地べたにはいつくばって、
日々の日当を稼いでいる土木建築職人たちの象徴なのです。

ハスラーの国、ケニア。
そこで行われる売買はまさに売り手と買い手の攻防戦です。
そこで必要なのはハイレベルの頭脳です。

しかし、私はあえてもう一言彼らに言いたいのです。
売り手がその攻防戦に勝って、
一時的にもうけたとしても、
その売り手は長期的なもうけを失うことになる。
だから、結局のところ、
売り手に必要なのは愛(正直さや誠実さを含む)なのだ!と。

かつて、人をだまして大金を手に入れて、
後にその悪事が明るみに出てしまったその人自身が、
「目の前の石ころを集めるのに大忙しで、
遠くにあるダイアモンドが目に入らなかった」
と書いているのを目にしたことがあります。

ケニアのハスラーに欠けているもの、本当に必要なもの、
それを、新大統領や、宗教指導者たちや、
小さな学校を田舎で運営する私のような人間が、
もっともっと身をもって示していけたら、
ケニアは変わっていくのでしょう。


ハスラーたちとの攻防を経て、
届けられたジャージ60着。
赤は幼・小、
黒は新設中学校

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相原 記


by kjkirakira | 2023-02-25 22:43 | 現地キラキラ ブログ Ke最新情報・記録